よく、こんな言葉を耳にします。
「そんなに考えたら振れないでしょ。」
「スイング中にそこまで全部考えられるわけがない。」
そしてゴルファー本人からも、
「自分、スイングを考えすぎている気がします。」
と言われることがあります。
でも「考えすぎ」という言葉は、かなり曖昧です。
まるで解決策が、
「もっと何も考えずに振ればいい。」
だけのように扱われがちです。
僕は、それではあまり役に立たないと思っています。
本当に考えるべきなのは、
スイング中の「考えすぎ」って、実際にはどんな状態なのか?
ということです。
問題は単純に、
「スイングについて知りすぎている」
ことではありません。
そして、
「スイング中は何も考えるべきではない」
ということでもありません。
本当の問題は、
自分のスイングの中で、いくつの“仕事”を意識的に管理しようとしているのか。
そして、その仕事がどこで起きていて、同じ動きのファミリーなのか、それともバラバラの別動作なのか。
ここを見ていくと、「考えすぎ」がかなり具体的に見えるようになります。
「考えすぎ」を一番わかりやすく見る方法は、スイングを2つの弧として考えること
まず、バックスイング全体を大きな青い弧として考えてみてください。
次に、ダウンスイングからリリースまでを大きな赤い弧として考えます。
これでスイング全体です。
そこから青い弧を、さらに小さな区間に分けます。
たとえば、
- P1–P2
- P2–P3
- P3–P4
同じように、ダウンスイング側もいくつかの区間に分けます。
そして、自分がスイング中に意識していることを、それぞれの弧のどこに置いているか考えてみてください。
すると、
「自分は考えすぎているのか?」
ではなく、
自分はスイングのどれくらいを、意識的にコントロールしようとしているのか?
という、もっと具体的な問いに変わります。
実戦で扱えるスイングは、基本的に「バックスイング1つ・ダウンスイング1つ」まで
一般的に、コース上で自由にプレーしながら扱える意識は、
バックスイングで1つ
そして、
ダウンスイングで1つ
くらいが上限だと僕は考えています。
そして理想を言えば、その2つは同じ動きのファミリーに属しているほうが扱いやすいです。
たとえば僕の場合。
バックスイングでは、P1–P2でグリップエンドが描く弧を意識しています。
そしてダウンスイングでは、腰の高さから反対側の腰の高さくらいまで、同じようにグリップエンドの弧を考えます。
ただし方向は逆で、より強く内側・左方向へ引いていくイメージです。
技術的には2つの意識があります。
でも、感覚としてはほぼ1つの動きです。
使っている体の対象も同じ。
考えている動きの種類も同じ。
そして、バックスイング側の意識とダウンスイング側の意識の間には大きな空白があります。
これは、
5つのまったく別の動きを順番に意識する
のとは全然違います。
「考えすぎ」は、スイングのほぼ全部に意識的な命令が入ったときに始まる
たとえば、こんな状態です。
P1–P2
「手をまずこう動かす。」
P2–P3
「次はもう少しこっちに。」
P3–P4
「クラブはここに上げる。」
切り返し
「ここから落とす。」
ダウンスイング前半
「ここから回る。」
インパクト
「手を前に出す。」
ひとつひとつを見ると、別におかしくはありません。
だからこそ、ゴルファーはこの状態に入りやすいんです。
それぞれ単体では、全部もっともらしく聞こえます。
でもスイング全体に並べてみると、
ほぼ全部の区間を意識的に管理しようとしている。
ここで、かなりわかりやすい定義ができます。
「考えすぎ」とは、スイングの弧の中で、意識的に管理しようとしている領域が多すぎる状態。
ただし「4つの意識」が「2つの意識」より複雑とは限らない
ここは少しだけニュアンスがあります。
チェックポイントの数だけでは、複雑さは決まりません。
たとえば、
クラブヘッドを自分の後ろ側へ回していく動きを意識しているとします。
その中で、
- いつ回し始めるか
- ハーフウェイバックでどこにあるか
- トップ付近でどこにあるか
- ダウンスイングでいつ前側へ戻り始めるか
を意識している。
技術的には複数のチェックポイントがあります。
でも脳の中では、
1つの連続した仕事
として扱えることがあります。
同じ動きを、同じ方向性の中で追っているからです。
では、これが、
- テークバックでクラブヘッドを回す
- P2–P4で左肩を下げる
- 切り返しで骨盤をずらす
- ダウンスイングで手首の形を変える
だったらどうでしょう。
今度は、単にチェックポイントが複数あるのではありません。
仕事そのものが入れ替わっています。
使う部位も違う。
方向も違う。
目的も違う。
だから、意識的に扱う難易度は一気に上がります。
つまり、
問題は「何個考えているか」だけではない。
もっと大事なのは、
何種類の“別の仕事”をやろうとしているか。
です。
同じ動きに属する4つのチェックポイントのほうが、まったく別の2つの動きよりシンプルに感じることすらあります。
多くのゴルファーは、最初から複雑なスイングを作ろうとしているわけではない
ここが面白いところです。
「考えすぎ」のゴルファーは、最初から毎回違うことを試しているわけではありません。
そうではなく、
ひとつずつ積み上げていく。
これが典型的です。
何かを試す。
うまくいく。
しばらくすると、別の部分が少し変に感じる。
そこで、
「これは続けたまま、ここだけ少し変えよう。」
となる。
それもうまくいく。
するとまた別の何かが気になる。
そこにもう1つ足す。
さらにもう1つ。
さらにもう1つ。
これが、
「でも、これはどうするの?」
という思考パターンです。
そして気づいた頃には、
バックスイングに5つ。
ダウンスイングに3〜4つ。
それぞれ別の動きが積み重なっています。
誰も最初から、
「スイング中に9個考えよう。」
とは思っていません。
ただ、消さずに足し続けた結果そうなります。
するとスイングは「置き換え」ではなく「追加」で作られるようになる
ここからが本当の問題です。
何かがおかしくなるたびに、
新しい指示が1つ増える。
でも古いものは消えない。
その意識が今も本当に必要なのか、誰も検証しない。
だからスイングはどんどん膨らんでいきます。
ひとつ修正。
またひとつ修正。
さらに調整。
前の調整を補うために、また別の調整。
そのうち、
スイング思考
ではなく、
スイングの取扱説明書
になります。
そして良いショットを打つには、その取扱説明書を全部うまく同期させなければいけない。
これが、ゴルファー自身が作ってしまった複雑な「動きの生態系」です。
一番厄介なのは、その取扱説明書でも「良い球」が出ること
だから、簡単に減らせないんです。
いろいろな動きがうまくタイミングしたとき、
本当に良いショットが出ます。
すると全部が必要に感じてきます。
もし僕が、
「この3つはもう考えなくていいです。」
と言ったとしても、
本人には、
「簡単にしましょう。」
とは聞こえません。
「良い球を打つために必要な3つを捨てましょう。」
と聞こえます。
そしてすぐに、
「でも、それをやめたらここが崩れませんか?」
となる。
だから、
「考えすぎだから、何も考えずに振ってください。」
ではほぼ解決しません。
その人にとって、簡単にすることは、
今までスイングを支えていたものを取り除くこと
に見えるからです。
だから、残すスイング思考はすべて「なぜ必要か」を説明できないといけない
僕がこういう状態をほどくときに一番大事にしているのは、
理由です。
一度、第一原理まで戻します。
それぞれのスイング思考に対して聞きます。
今のミスパターンは何ですか?
次に、
そのミスを実際に引き起こしている動きは何ですか?
次に、
今考えているこの動きは、その原因をどう変えるために存在しているんですか?
そして最後に、
なぜこの思考を今も残す必要があるんですか?
ここを論理的に説明できないなら、
なぜ今もその意識を持ち続けているのでしょうか。
多くのスイング思考は、
「これをやったら、一度すごく良い球が出た。」
という理由だけで残っています。
でも、それだけでは不十分です。
一度うまくいったからという理由だけで、スイング思考を残さない。
意識的に残す仕事には、すべて理由が必要です。
不要な意識を減らすと、一時的にショットが悪くなることもある
ここで多くのゴルファーが不安になります。
スイングを簡単にする。
古いタイミング調整を3つ、4つ外す。
すると急に当たりが悪くなる。
そこで、
「ほら。やっぱり必要だった。」
となります。
でも、必ずしもそうではありません。
ここはかなり重要です。
球が悪くなったことと、スイングが悪くなったことは同じではありません。
食生活を変えるイメージで考えてみてください。
今日から急に健康的な食事に変えたとしても、
明日いきなり見た目が健康的になるわけではありません。
体調がまだ悪いかもしれない。
見た目もまだ変わらないかもしれない。
結果が出るまで時間がかかることはあります。
でも、それは入力が改善していないという意味ではありません。
スイング変更も同じです。
今までタイミングで成立させていた古い仕組みをいくつか外す。
すると、一時的に当たりが悪くなることはあります。
だからといって、新しい動きそのものが悪いとは限りません。
だから「良い球が出たか」ではなく、変えたい動きそのものをデータで見る
もしスイングを1〜2個の動きまで整理したなら、
その1〜2個を測ります。
たとえば、
- 実際に動きがOKゾーンへ入ったか
- 100球中、何球がOKゾーンに入ったか
- その割合は増えているか
- エラー率は下がっているか
- 300〜600回ほど正しく確認できた反復のあと、以前よりディスパージョンが狭くなっているか
を見る。
これは、
「今日3球ダフった。」
よりずっと意味があります。
今変えようとしている動きが、本当に安定してきているなら、
一時的にショットが悪くても、プロセス自体は進んでいる可能性があります。
大事なのは、
自分が変えようとしている動きは、本当に良くなっているのか?
です。
これが見えると、悪いショットを1球打っただけで、また古い取扱説明書を全部戻す必要がなくなります。
本当に「考えすぎ」か知りたいなら、紙に自分のスイングを書いてみる
これはかなり簡単にできる実践テストです。
紙を1枚用意してください。
まず、バックスイングを表す半円を1つ描く。
次に、ボールからフィニッシュまでを表す半円をもう1つ描く。
最初を、
青い弧
次を、
赤い弧
と考えます。
そしてバックスイング側を、
- P1–P2
- P2–P3
- P3–P4
のように分ける。
ダウンスイング側も同じように分けます。
これで、自分のスイング全体をシンプルに可視化できます。
次に、それぞれの区間で「実際に何を考えているか」を書く
かっこよく書く必要はありません。
専門用語にする必要もありません。
本当に頭の中で考えていることを、そのまま書いてください。
多くのゴルファーは、たぶんこんな感じになります。
「最初は手をちょっとこうしたい。」
次に、
「そこからもう少しこっちに動かしたい。」
次に、
「クラブはここに感じたい。」
次に、
「ここから落としたい。」
そして、
「ここから回り始めたい。」
どれも単体では、そこまでおかしく聞こえません。
そこがポイントです。
ひとつひとつは、全部もっともらしい。
でも紙全体を見ると、
突然こう気づくかもしれません。
自分、スイングのほぼ全部を意識的に動かそうとしてるな。
それが「考えすぎ」の形です。
弧を書いてみると、3つのことが見えてくる
すべてを書き出したら、3つを見てください。
1. 実際に何個の意識があるか?
バックスイングに1つ、ダウンスイングに1つを超えているなら、
少なくとも一度見直す価値があります。
それだけで間違いという意味ではありません。
でも、ひとつのサインにはなります。
2. 何種類の動きのファミリーを管理しているか?
たとえば、
- 手
- クラブヘッド
- 肩
- 骨盤
- 手首
- プレッシャー
を全部別々のタイミングで考えているなら、
複雑さは一気に上がります。
3. スイング全体のどれくらいを意識で埋めているか?
大きな空白がありますか?
それとも、ほぼすべての区間に何かしら意識的な仕事がありますか?
ここまで見ると、
「なんとなく考えすぎている気がする」
ではなく、
実際にその構造を紙の上で見ることができます。
シンプルなスイング思考は、弧の中にもっと「空白」がある
整理したあと、もう一度同じ図を描いてみてください。
たとえば青い弧には、
P1–P2で1つの意識。
そのあとはほぼ空白。
そして赤い弧のかなり後半で、
リリース付近に1つの意識。
また空白。
あるいは、その2つが同じ動きのファミリーに属している。
どちらにしても、見た目はかなりシンプルになります。
そして、この空白は悪いことではありません。
弧に空白があるのは、むしろ良いことです。
それは、スイングの一コマ一コマを意識的に管理しようとしていないということ。
すでに学んだ動きを、ある程度無意識に任せているということです。
目標は「スイングを知らなくなること」ではない。意識が必要な仕事を減らすこと
ここが、「考えすぎ」で一番誤解されやすいところだと思います。
スイングについて詳しく知ることが悪いわけではありません。
むしろ深く理解していていい。
- チェックポイント
- OKゾーン
- Root Flaw(ルートフラウ)
- 自分のミスの原因
- なぜ1つの動きが別の動きに影響するか
- 今何を変えようとしているか
全部知っていていい。
その知識自体は役に立ちます。
問題は、それら全部が、
スイング中の別々の意識的な命令
になってしまうことです。
ゴルフスイングについて、知ることを減らす必要はありません。
スイング中に、意識的に管理しなければいけないことを減らす必要があります。
この2つは全然違います。
スイングスコアは「何に意識を使うべきか」を決めるためのもの。KiwiEliteは、それを考えなくてもできるところまで作るためのもの
これも、スイングスコアをこの形で作った理由のひとつです。
目的は、
20個の悪いところを見せて、20個全部を意識して直してもらうこと
ではありません。
大事なのは、
- 実際に有効な範囲から外れているのはどこか
- Root Flaw(ルートフラウ)は何か
- 最初にどの動きへ意識を使うべきか
- その動きが本当に改善しているか
を判断することです。
これができると、
悪い球が出るたびに、
「でも、これはどうするの?」
と新しい意識を追加するサイクルから抜けやすくなります。
そしてKiwiEliteでは、その変化を時間をかけて作っていきます。
動きを整理する。
練習する。
確認する。
正しい反復を積む。
少しずつ自動化する。
そして最終的には、
その動きを出すために必要な意識の量そのものを減らしていく。
それが長期的なゴールです。
次のスイング思考を足す前に、まず弧を書いて「自分はどこまでコントロールしようとしているか?」を見てみてください
青と赤の2つの弧を描く。
今のスイング中に持っている意識を、全部そこへ書く。
まずは1つ1つを評価しなくていいです。
全部、紙に出す。
そして少し引いて、全体を見てください。
自分にこう聞きます。
このスイングのどれくらいを、自分は意識的にコントロールしようとしている?
もし、ほぼすべての区間に別の仕事が入っているなら、
たぶん今必要なのは、
もう1つ新しいゴルフのコツ
ではありません。
必要なのは、
仕事を減らすこと。
良いゴルフスイングは、ものすごく複雑でもいい。