ゴルフでは、ずっと消えない議論があります。
自分の自然なスイングを残すべきなのか?
それとも、スイングを変えて、もっと「正しい」スイングを身につけるべきなのか?
この議論は、だいたい途中から体験談になります。
ある人はこう言います。
「もともと自然にいいスイングをしていた人が、レッスンを受けて全部変えたら、そこからずっと調子を崩してしまった。」
すると反対側から、こういう話が出てきます。
「自分はスイングを作り直してから、人生で一番いいゴルフができるようになった。」
どちらも本当だと思います。
ただ、僕はこの議論をしている「レイヤー」が少し違うと思っています。
本当に聞くべきなのは、
自分のスイングを残すべきか、変えるべきか?
ではありません。
もっと大事なのは、
今のスイングが、自分の目標スコアを現実的に達成できる数字を出しているか?
です。
これは、実際にある程度テストできます。
まずは「どんなスコアを出したいのか」から考える
バックスイング。
腰の回転。
フェースの向き。
クラブの位置。
そういうものを見る前に、まず考えたいのは、
自分は何点で回りたいのか?
です。
100切り。
90切り。
80切り。
この3つでは、必要なゴルフの内容がかなり違います。
パー72のコースなら、
- 99 = +27
- 89 = +17
- 79 = +7
です。
目標スコアが低くなるほど、大きなミスを許せる余裕は小さくなります。
だから、
「このスイングは綺麗か?」
より先に、
「今のスイングはどんなミスを作っていて、そのミスは自分の目標スコアに対して高すぎる代償になっていないか?」
を考えた方がいい。
最初に見るのは「壊滅的なミスショット」
まず最初に見たい数字はシンプルです。
1ラウンドで、壊滅的なフルスイングのミスを何回しているか?
ここでいう「壊滅的なミスショット」は、スコアに大きなダメージを与えるミスです。
たとえば、
- OB
- ペナルティエリア
- シャンク
- 大ダフリ
- 大トップ
- 次のショットを横に出すだけのリカバリーにしてしまうティーショット
- その他、明らかに1打以上を失うような大きなフルスイングのミス
などです。
すべてのミスショットを数えるわけではありません。
グリーンを10メートル外したからといって、それだけで壊滅的なミスとは限りません。
アイアンが少し薄く当たって、グリーン手前に止まっただけなら、それも壊滅的とは言えません。
ここで数えたいのは、
そのホールで本来出せそうだったスコアを、大きく変えてしまうショット
です。
今回の簡単なテストでは、
壊滅的なミスショット1回 = 約2打分のダメージ
として考えます。
もちろん、毎回ぴったり2打ではありません。
OBならもっと大きなダメージになることもあります。
大ダフリなら2打より少ないかもしれません。
目的は、正確なStrokes Gainedを計算することではありません。
知りたいのは、
この大きなミスだけで、今の平均スコアと目標スコアの差を説明できるくらいのダメージになっているのか?
です。
100切りなら、+27まで使えます。
90切りなら、+17。
80切りなら、+7。
目標が低くなるほど、この大きなミスを吸収するのは難しくなります。
では、実際に見てみましょう。
例1:100切りを目指している場合
現在の平均スコアが、
110
目標が、
99
だとします。
差は、
11打
です。
そして、1ラウンド平均で、
6回の壊滅的なフルスイングのミス
があるとします。
たとえば、
- ティーショットが1回OB
- 1回ペナルティエリア
- アイアンを1回30メートルしか進まない大トップ
- 2回大ダフリ
- 1回ティーショットを林に入れて横に出すだけ
という感じです。
今回の簡単な計算なら、
6回 × 2打 = 約12打
です。
100切りまで11打なのに、大きなフルスイングのミスだけで約12打を失っている。
これは、
今のスイングがかなり大きなボトルネックになっている可能性が高い
という強い証拠になります。
100切りに、綺麗なスイングは必要ありません。
15回グリーンに乗せる必要もありません。
突然ものすごいショットメーカーになる必要もありません。
実際、
9ボギー + 9ダブルボギー = 99
です。
かなりミスをしても100は切れます。
問題なのは、普通ならボギーで終われるホールを、トリプルボギー以上にしてしまうショットです。
それが毎ラウンド6回あるなら、スイングのどこかを変える理由はかなりあります。
### では、同じ平均110でも別のゴルファーなら?
平均スコアは同じ110。
目標も同じ99。
でも、壊滅的なミスは、
1ラウンド2回だけ
だとします。
すると、
2回 × 2打 = 約4打
です。
その大きなミスを全部なくせたとしても、
110 → 約106
です。
まだ目標の99まで、
約7打
あります。
ここで診断は大きく変わります。
もちろん、スイングでも打数は失っています。
でも、
スイングだけでは目標との差をほとんど説明できていない。
残りは、
- 3パット
- アプローチ
- クラブ選択
- コースマネジメント
- グリーン周りで簡単な状況から打数を使いすぎている
などかもしれません。
スイングを良くすれば、もちろんプラスです。
でも、この数字だけを見る限り、
スイングが明らかに一番大きなボトルネックだ
とは言いにくい。
同じ110。
同じ99という目標。
でも、数字が違えば答えも変わります。
例2:90切りを目指している場合
今度は平均スコアが、
100
目標が、
89
だとします。
これも差は、
11打
です。
もし壊滅的なミスが、
1ラウンド6回
あるなら、
6回 × 2打 = 約12打
です。
目標まで11打。
壊滅的なフルスイングのミスだけで約12打。
この場合も、スイングがかなり大きなボトルネックになっている可能性が高いです。
では反対に、
同じ平均100。
同じ目標89。
でも壊滅的なミスが、
2回だけ
なら、
2回 × 2打 = 約4打
です。
それを全部なくしても、
100 → 約96
まだ目標まで、
約7打
あります。
つまり、スイングでも打数は失っていますが、スコア差の大部分は説明できません。
ここでは、パッティング、ショートゲーム、距離感、判断などをもっと強く疑った方がいいかもしれません。
基本的な考え方は、100切りと同じです。
ただし、80切りになると少し変わります。
80切りでは「壊滅的なミス」だけでは足りなくなる
80切りを狙うレベルになると、壊滅的なミスショットだけを見ても十分ではないことがあります。
なぜなら、本気で80切りを狙っているゴルファーなら、
- ほとんどのティーショットをプレー可能な場所に置ける
- シャンクはほとんど出ない
- 大トップも少ない
- 大ダフリも少ない
- ペナルティも少ない
ということが普通にあり得るからです。
この場合、壊滅的なミスのテストをすると、
「大きな事故は問題ではなさそう」
という結果になります。
でも、それだけで、
今のスイングは70台を出すのに十分
とは言えません。
このレベルになると、もう1つ質問を足した方がいい。
スイングがホールを壊しているか?
だけではなく、
スイングが、必要なだけパーを取れるチャンスを作っているか?
です。
そこで使いやすいのが、
パーオン率(GIR)
です。
79で回るなら、ある程度のパーが必要になる
パー72のコースで79なら、
+7
です。
バーディーをいったん考えない単純な形なら、
11個のパー
が必要です。
では、
平均スコアが、
90
目標が、
79
だとします。
差は11打です。
でも、このゴルファーは先ほどの例と違って、
壊滅的なミスは1ラウンド1回だけ
だとします。
今回の考え方なら、
1回 × 2打 = 約2打
です。
それを全部消しても、
90 → 約88
です。
つまり、大きな事故では目標との差をほとんど説明できません。
ここで、壊滅的なミスにこだわるのをやめて、GIRを見ます。
もし1ラウンド5回くらいしかパーオンしていなかったら?
平均で、
5 GIR
だとします。
5回パーオンすれば、その5ホールは2パットでパーにできるかなり現実的なチャンスがあります。
でも79を出すために11個のパーが必要だとすると、
まだ、
あと6個のパー
が必要です。
そして、残り13ホールはグリーンを外しています。
つまり、
13回グリーンを外して、そのうち約6回はパーを拾う
必要がある。
できますか?
もちろんできます。
アプローチが絶好調の日もあります。
少し長いパットが何本か入ることもあります。
どこかでバーディーを取って計算が変わることもあります。
1日だけなら79を出すこともできます。
でも、
安定して70台で回る
ことを目標にするなら、毎回これだけショートゲームに頼るのはかなり厳しい。
ここでは、壊滅的なミスがほとんどなくても、スイングがまだボトルネックになっている可能性があります。
OBが原因ではない。
30メートルしか進まないトップが原因でもない。
フルスイングが、十分な数の質の高いアプローチを作れていない。
という別の問題です。
つまり、
スイングが「大事故」で打数を失っているのではなく、「チャンス不足」で打数を失っている可能性がある。
では、9 GIRなら?
別のゴルファーを考えます。
平均スコアは同じ、
90
目標も同じ、
79
壊滅的なミスも同じ、
1ラウンド1回
です。
ただし、このゴルファーは、
平均9 GIR
だとします。
9回パーオンしているなら、2パットでパーにできる現実的なチャンスが9回あります。
11個のパーが必要なら、
グリーンを外した9ホールから、
あと2個くらいパーを拾えばいい。
こちらの方が、かなり現実的です。
それでも平均90なら、今度は別の場所を強く疑いたくなります。
- 3パットが多い?
- グリーン周りから3打、4打使っている?
- 戦略的に大きなミスをしている?
- フルスイングが十分なチャンスを作ったあとに、ウェッジやパターで打数を捨てている?
もちろん、スイングをもっと良くすることはできます。
でも、この数字なら、
「フルスイングが79を出せない最大の原因です」
という証拠はかなり弱くなります。
これが、この考え方のポイントです。
では、結局何をテストしているのか?
僕たちは、
スイングが技術的に正しい見た目をしているか
を判定したいわけではありません。
知りたいのは、
今のスイングが、自分の目標スコアを現実的に達成できる数字を出しているか?
です。
100切り、90切りを狙うなら、壊滅的なミスショットはかなり使いやすい最初のフィルターになります。
そのミスだけで、今の平均スコアと目標スコアの差の大部分、または全部を説明できるなら、スイングを改善する理由はかなり強い。
80切りくらいになると、それだけでは足りないことがあります。
そこでGIRを見る。
目標スコアに必要なパーのチャンスを、今のスイングが十分作れているか?
この方が、
「バックスイングが変だから直した方がいい」
より、ずっと役に立つ質問だと思います。
自分のゴルフでも試してみたいですか?
今のスイングが本当にボトルネックになっているのかを試してみたい人のために、このページに無料のトラッカーを作りました。
原因はスイング?
入力するのは、
- 目標スコア
- 4ラウンド分の実際のスコア
- 各ラウンドのGIR
- 各ラウンドの壊滅的なミスショット数
だけです。
この数字をまとめて見ながら、
今のスイングが目標スコアのボトルネックになっている可能性が高いのか?
それとも、
もっと大きな問題が別の場所にある可能性が高いのか?
をシンプルに確認できます。
1ラウンドだけでは判断しません。
ゴルフは1日だけならかなりブレます。
ものすごく調子が悪い日もあります。
逆に、ひどいショットが全部ラッキーでフェアウェイに戻ってくる日もあります。
だから最低でも4ラウンド分を使って、1日の結果ではなく「傾向」を見ます。
このトラッカーで使っている簡単な計算
基本的な考え方は、ここまでの例と同じです。
今回の簡単なテストでは、
壊滅的なミスショット1回 ≈ 約2打分のダメージ
として考えます。
なので、
推定クリーンスイングスコア = 平均スコア −(平均壊滅的ミス数 × 2)
です。
これは、本格的なStrokes Gained分析の代わりではありません。
あくまで、
最初のフィルター
です。
壊滅的なミスによる推定ダメージを引くだけで、目標スコア以下まで行くなら、
今のスイングがかなり大きなボトルネックになっている可能性が高い。
それでも目標よりかなり上なら、
壊滅的なフルスイングのミスだけでは、問題全体を説明できない。
ということです。
そして80切りくらいになると、GIRが2つ目のフィルターになります。
壊滅的なミスが少なくても、GIRが平均5回前後以下なら、
質の高いチャンスが少なすぎることで、スイングがまだ目標を難しくしている可能性がある。
と考えます。
だから「自分のスイングを残す」と「スイングを変える」は、どちらも正しいことがある
最初の話に戻ります。
自然ないいスイングをしていたのに、レッスンを受けて全部崩れてしまった人。
その人は、もともと目標に必要な数字を出せるスイングだったのかもしれません。
変える必要がない部分まで変えてしまったのかもしれない。
逆に、スイングを作り直してから人生で一番いいゴルフができるようになった人。
その人の昔のスイングは、毎ラウンド6回も壊滅的なミスを作っていたのかもしれません。
あるいは、大事故は少なくても、目標スコアに必要なだけのGIRを作れていなかったのかもしれません。
どちらの話もあり得ます。
でも、その体験談だけでは、
あなたがどうするべきか
は分かりません。
あなた自身の目標スコアと、あなた自身の数字を見た方がずっと分かりやすい。
では、自分のスイングを変えるべきなのか?
まず目標を決める。
そして、今のゴルフが実際に何を出しているのかを見る。
壊滅的なフルスイングのミスだけで、現在の平均スコアと目標スコアの差を説明できるくらいのダメージがあるなら、スイングを改善する理由はかなりあります。
そのミスがすでに少なくて、80切りを狙っているなら、必要なパーを現実的に作れるだけのGIRがあるかを見る。
逆に、フルスイングの数字がすでに目標をサポートしているなら、もっと簡単に打数を減らせる場所が別にあるかもしれません。
パッティング。
ショートゲーム。
距離感。
コースマネジメント。
判断。
僕なら、
「見た目が変だから」
という理由だけでスイングを変えません。
今のスイングが、自分の目標スコアを邪魔しているという証拠があるか?
を見ます。
それでもスイングを変える必要があるなら、どうやって悪化させないのか?
ここでもう一度、最初の体験談に戻ります。
自分なりのスイングがある。
レッスンを受ける。
いろいろ変え始める。
スイングが悪くなる。
そして半年経っても戻らない。
これは、普通に起こり得ます。
だから、数字を見て、
「やっぱり自分はスイングを改善した方がいい」
となったとしても、まだもう1つ質問があります。
その変更が本当に正しい変更なのか、どうやって分かるのか?
ここが、従来のスイング分析で難しいところだと思っています。
コーチがスイングを見て、
- 「この位置は好きじゃない」
- 「クラブはもう少しここに来てほしい」
- 「腰はもっとこう見えた方がいい」
- 「手元が内側に入りすぎている」
と言う。
正しいかもしれません。
間違っているかもしれません。
でも、その判断に**測定できる基準**がなければ、かなりの部分を個人の意見に頼ることになります。
そしてゴルファーは練習場に行って、それを変えようとする。
スイングの感覚は変わる。
一時的に球が悪くなることもある。
でも、ここでどう判断するのでしょうか?
本当に動きは良くなった?
変化量は足りている?
やりすぎた?
そもそも、そこが本当に変えるべき問題だった?
これが、スイングスコアを違う形で作った理由です。
スイングスコアは、
「僕がこのスイングの見た目を好きか?」
から始まりません。
スイング全体を、測定できるチェックポイントと、定義されたGOOD / BADの範囲で確認していきます。
だから、
- すでにGOODの範囲に入っているところ
- 範囲から外れているところ
- どこからスイングが崩れ始めているのか
- そもそも変える必要がなさそうなところ
を確認できます。
目的は、全部作り直すことではありません。
誰かが考える「完璧なスイング」に置き換えることでもありません。
診断を測定できるものにすること。
ラウンドの数字から、
「スイングがボトルネックになっている」
と分かったなら、次にやるべきことは、
「じゃあ適当にいろいろ変えてみよう」
ではありません。
次に知りたいのは、
「具体的にどこがGOODで、どこがBADで、どこから始めるべきなのか?」
です。
それを見るために作ったのがスイングスコアです。