手元を減速させると、本当にヘッドは加速する?
「減速 → リリース → ヘッド加速」理論で、見落とされやすいポイント
YouTubeでゴルフのレッスン動画をよく見る人なら、こんな説明を一度は聞いたことがあると思います。
「手元を減速させると、ヘッドが走る」
あるいは、
「体を止めると、クラブが走る」
「ダウンスイングの早い段階で力を出して、あとは力を抜く」
「手首の力を抜いて、クラブを自然にリリースさせる」
「体から腕、腕からクラブへエネルギーを伝える」
という説明かもしれません。
これをキネマティックシーケンスとして説明する人もいます。
運動連鎖やキネティックチェーンという言葉を使う人もいます。
二重振り子のモデルを使って説明する人もいます。
あるいは単純に、
「力を抜けばヘッドが走る」
「クラブの邪魔をせず、自然にリリースさせる」
と教わった人もいるでしょう。
言い方は少しずつ違います。
でも、全体の考え方はだいたいこうです。
体と腕が先に加速する → 体や腕が減速する → エネルギーがクラブ側へ伝わる → 手元が減速する → クラブヘッドが加速する → あとはクラブの動きを邪魔せず自然にリリースさせる
この説明が広く使われるのには理由があります。
観察されている現象の一部は、本当に起きているからです。
良いゴルフスイングでも、体の各部位はそれぞれ違うタイミングで加速・減速します。
なので、この記事で
「手元は減速しない」
と言うつもりはありません。
実際、減速します。
では本当に考えたいのは何か。
その「減速」は、実際には何を意味しているのか?
ということです。
手元の速度が落ちることを観察するのと、
なぜ速度が落ちたのかを説明するのは別の話です。
そして、その説明からさらに、
「だから手首は受動的にして、クラブを勝手にリリースさせればいい」
と結論づけるのは、さらにもう一段先の話です。
今回、僕たちが一番考えたいのはこの最後の部分です。
手元が実際にどう動いているのか。
クラブがどう加速しているのか。
そして、インパクトという「衝突」の中で何が起きているのか。
そこまで見ると、実際のスイングは
早い段階で加速する → 手元を減速させる → あとはクラブに任せる
というほど単純ではありません。
そして記事の最後では、あなた自身がリリースしすぎなのか、逆にリリースが足りないのかを確認できる、フェースオンからの簡単なチェック方法も紹介します。
まず、なぜ僕たちが「飛距離」について話すのか
キウイゴルフでは、いちばん「きれいに聞こえる理論」を探すことを目的にしていません。
僕たちが知りたいのは、もっとシンプルです。
今、あなたのスイングはどこにあるのか?
どこがOKゾーンから外れているのか?
何を変えればOKゾーンに戻せるのか?
そして最後に、
本当に変わったのか?
を確認します。
この考え方が非常に重要になった例のひとつが、テレビ企画で元阪神タイガースの金本知憲さんのドライバーを見たときです。
最初は、およそ280ヤード。
そこから最終的には、約350ヤードまで飛距離を伸ばしていきました。
でも、
「クラブを自然にリリースしてください」
と一言伝えただけで350ヤードになったわけではありません。
実際のスイングとクラブの動きを確認して、どの条件が目標レンジから外れているのかを判断し、その人に必要な「感覚」を使って動きを変えていきました。
その中で確認していたことのひとつが、まさに今回のテーマです。
手元に対して、クラブが実際にどれくらいリリースされているのか?
この金本さんの例には、あとで戻ってきます。
実際の変化を見たい方のために、金本さんの一連の動画をここに置いています。
その前にまず、なぜ「手元の減速でヘッドが加速する」という説明だけでは不十分なのかを整理していきましょう。
そもそも「手元の減速理論」という1つの正式な理論があるわけではない
ここは大切です。
ゴルフ界に、全員が同じ定義で使っている
「手元の減速理論」
という正式な理論があるわけではありません。
似た考え方が、いくつかの違う言葉で説明されています。
たとえば、
- キネマティックシーケンス
- 運動連鎖
- キネティックチェーン
- 近位から遠位へのシーケンス
- 二重振り子
- エネルギー伝達
- 運動量の伝達
- 手元の減速
- 体のブレーキ
- 自然なリリース
- ヘッドを走らせる
- 力を抜く
- 手元を止める
などです。
もちろん、コーチによって細かい意味は違います。
なので、全員がまったく同じことを教えているように扱うつもりはありません。
ただ、かなり共通して見られる「シンプルなストーリー」があります。
STEP 1
体がスピードを作る。
STEP 2
体が減速し始める。
STEP 3
そのスピードやエネルギーが腕へ伝わる。
STEP 4
腕や手元が減速する。
STEP 5
クラブヘッドが追い越すように加速する。
STEP 6
だからゴルファーは余計なことをせず、クラブを自然にリリースさせる。
最初のいくつかは、実際のゴルフスイングでも観察される現象です。
重要なのは、
そこから本当にSTEP 6まで自動的に導けるのか?
という部分です。
それを考えるためには、まずこの説明でよく使われる「モデル」を見る必要があります。
最初の問題:ゴルフスイングは「固定された半径の円運動」ではない
この理論が分かりやすい理由のひとつは、シンプルな物理モデルで説明しやすいことです。
たとえば車輪。
自転車のペダルを強く踏めば、車輪はその後も回り続けます。
水車でも同じです。
一度回転の勢いを作れば、一定の中心のまわりを回り続けます。
そしてゴルフでは、二重振り子のモデルもよく使われます。
最初の振り子が動く。
その動きが次の振り子に影響する。
時間差によって、先端側のクラブが大きく加速する。
こうしたモデルはとても便利です。
1つの動きが、次のセグメントにどう影響するのかをイメージしやすいからです。
ただし、かなり大きく単純化されているものがあります。
それが、
スイングの「形」と「半径」です。
車輪には分かりやすい中心があります。
半径もほぼ固定されています。
シンプルな振り子も、比較的決まった支点と半径の中で動きます。
でも、実際のゴルフスイングは違います。
骨盤は移動しながら回転します。
胸郭も移動しながら回転します。
肩も動きます。
腕は胸郭に対して動きます。
手元は、そのすべてに対して動いています。
そして手元と各回転中心との距離も、スイング中ずっと変化しています。
つまり、手元の軌道そのものが変化しています。
ダウンスイングでは手元が外側へ動き、
もっとも外側に近いポイントへ向かい、
そこから軌道が切り替わり、
インパクトへ向けて別の方向へ動いていきます。
そう考えると、
「最初に回しておいて、あとはそのまま回転させればいい」
という説明には、すでに足りない部分が出てきます。
クラブは、固定半径の車輪に取り付けられているわけではありません。
スイング中、体と腕とクラブでできた連結システムそのものの形が変わり続けています。
そしてこの「形の変化」が、次に出てくる手元の減速を考えるときに非常に重要になります。
手元は確かに減速する。でも、なぜ?
もう一度はっきりさせておきます。
手元が減速すること自体を否定しているわけではありません。
骨盤は加速も減速もします。
胸郭も加速も減速もします。
腕も加速も減速もします。
手元も加速も減速もします。
そして、あるセグメントの速度が落ちている間にクラブヘッドが加速することもあります。
ここまでは問題ありません。
本当に知りたいのは、
なぜ、そのタイミングで手元の速度が落ちているのか?
です。
手元の速度グラフが下がったのを見て、すぐに
「ここで手元の仕事は終わり、エネルギーがクラブへ移った」
と考えてしまうと、動きの一部を飛ばしてしまう可能性があります。
先ほど確認したように、
手元は固定半径の円を回っているわけではありません。
手元の軌道は変わっています。
外側へ動き、
そこから進行方向を変えなければなりません。
つまり、手元はリダイレクション(方向転換)をしています。
動いている物体が方向を変えるということは、速度ベクトルが変化しているということです。
だから、そこで見える速度低下をすべて
「ゴルファーが仕事をやめた」
と説明することはできません。
その一部は、手元が変化する軌道の中で方向転換していることと関係しています。
手元は「減速して終わり」ではなく、方向転換している
ダウンスイングの手元を、もう少し順番で見てみましょう。
手元が加速します。
外側へ動きます。
もっとも外側に近い位置へ向かいます。
そこから軌道が変わります。
手元が方向転換します。
このリダイレクションの中で、手元の速度は落ちることがあります。
でも、そこで終わりではありません。
方向転換したあと、インパクトへ向かう新しい軌道の中で、手元は再び速度を上げることができます。
つまり、より正確にシンプル化すると、
加速
→ 方向転換の中で減速
→ リダイレクション
→ 再加速
→ その後さらに大きく減速
という流れになります。
これと、
加速
→ 減速
→ 手元の仕事は終了
→ 受動的になる
→ クラブが勝手にリリースされる
では、意味がかなり違います。
ここで役に立つのが、スピードと加速度は同じではないという考え方です。
「スピードがピークより遅い」=「まだ減速している」ではない
F1マシンが、こんな速度変化をしたとします。
200km/h → 140km/h → 150km/h → 165km/h → 180km/h
最後の180km/hは、最初の200km/hより遅いですよね。
でも、140km/hから180km/hへ向かう区間では?
当然、加速しています。
ゴルフスイングでも同じ考え方ができます。
手元が一度高い速度に達し、
リダイレクションの中で速度が落ち、
その後インパクトに向けて再び速度を上げているなら、
「以前のピークより遅いから、まだ減速している」
とは言えません。
低くなったポイントから見れば、再加速しています。
さらに、もうひとつ重要です。
速度には方向も含まれます。
だから手元が進行方向を変えること自体、加速度と関係します。
これが、手元の軌道が変化していることを無視できない理由です。
手元の減速自体は本物です。
でも、
「手元はスピードを作り終えたから減速している」
だけで説明するのは不十分です。
水車より、F1のコーナリングの方がイメージしやすい
だから僕は、水車よりもF1のコーナリングの方が、この部分を理解しやすいと思っています。
F1マシンはコーナーへ向けて加速します。
コーナー進入で減速します。
向きを変えます。
そしてコーナー出口では、またアクセルを踏んで加速します。
ブレーキング区間だけを見て、
「ここでエンジンの仕事は終わった。あとは惰性でコーナーを抜ければいい」
とは考えませんよね。
減速は、進行方向を変えるための過程の一部でもあります。
もちろんゴルフスイングとF1は同じではありません。
ただ、
加速 → 方向転換の中で減速 → リダイレクション → 再加速
というイメージは、
一度押す → あとは車輪が勝手に回る
よりも、今回考えたい問題には近いです。
そしてここから、ゴルファーにとって本当に重要なポイントに入ります。
本当に問題なのは「減速したら、リリースは受動的にすべきなのか?」
ここで、正しい観察が、少し危険なアドバイスに変わることがあります。
ゴルファーは動画の中で、
- 手元の速度が落ちる
- その間にクラブヘッドが加速する
- クラブが手元を追い越していく
という動きを見ます。
そして、
「力を抜いてください」
「クラブを走らせてください」
「邪魔しないでください」
「自然にリリースさせてください」
と言われます。
場合によっては、手元を止めたり減速させたりして、ヘッドを走らせるドリルも紹介されます。
では、それを見たゴルファーはどう理解しやすいでしょうか?
多くの場合、
「自分でクラブをコントロールするのをやめて、手首を受動的にすればいい」
となります。
でも、ここで大きなジャンプが起きています。
最初に確認したのは、
手元が減速する。
という現象です。
そこから、
だから手首は力学的に受動的であるべきだ。
という結論に移っています。
この2つは同じではありません。
その理由を見るために、まず「受動的なリリース」とは何なのかを整理します。
「受動的なリリース」とは何か?
ここでいう「受動的」は、
スイングがリラックスして見える、という意味ではありません。
力感がなく見える、という意味でもありません。
本人が「手を使っている感じがしない」と感じている、という意味でもありません。
それらはすべて、見た目や感覚の話です。
ここで言う受動的なリリースとは、もっと力学的な意味です。
クラブのリリースが主に、それまでのセグメントの動きによって生まれ、クラブを加速・コントロールするための能動的な筋出力による手首トルクがほとんど使われていない状態。
というイメージです。
ここで大事なのは、前のセグメントの動きが、実際に手首まわりのトルクへ影響することです。
腕の速度や方向が変われば、クラブにも影響します。
つながったセグメント同士が相互作用します。
つまり、ゴルファー本人が
「今、手首でトルクを出そう」
と意識していなくても、腕の動きによってクラブの向きが変わったり、加速したりすることはあります。
これは本当です。
ただし、そこから
「だからゴルファー自身の筋出力によるトルクは消える」
とは言えません。
手首まわりのトルクには、複数の要因が同時に存在できる
ここが非常に重要です。
腕の速度や方向が変わると、その動きはクラブへ影響します。
つまり、セグメント同士の相互作用そのものが、クラブのリリースに貢献できます。
なので、
腕の動きそのものが、クラブをリリースさせる方向のトルクに貢献する。
これは問題ありません。
でも同時に、
ゴルファー自身が手首・前腕・手を使って筋出力によるトルクを加えている。
こともできます。
この2つは同時に存在できます。
ここが見落とされやすいポイントです。
連結したセグメントの動きによって生まれるトルクがあるからといって、ゴルファー自身が生み出すトルクがゼロになるわけではありません。
そしてこれが重要なのは、クラブが「何もない空間」をただ加速しているわけではないからです。
このあとクラブは、衝突に入ります。
次に考えたいのが「衝突」の問題
このタイプの説明では、壁のようなものにぶつかる例が使われることがあります。
もし、これから棒のようなものを動かないレンガの壁にぶつけると分かっていたらどうしますか?
当然、衝突に備えます。
体を固めるような準備もします。
大きな外力を受ける準備をします。
そして、その「止められる衝突」に備える中で、接触前からかなり減速することも考えられます。
これは、インパクト前に体や腕が減速する理由の一部をイメージするには便利です。
ただし、決定的な違いがあります。
ゴルフボールはレンガの壁ではありません。
ゴルフは「衝突して止まる」のではなく、「衝突を通過していく」
ゴルフの目的は、
クラブを加速する → ボールに到達する → 止まる
ではありません。
クラブはボールと衝突したあとも動き続けます。
アイアンなら、その直後に地面とも相互作用する可能性があります。
だから実際のタスクは、もっとこうです。
スピードを作る
→ クラブをデリバリーする
→ 衝突の中でクラブを安定させる
→ インパクトを通過していく
ここはかなり重要です。
クラブは、ただボールのところまで速く到達すればいいわけではありません。
外力がクラブに加わる中でも、クラブという「道具」をある程度コントロールした状態で通過させる必要があります。
芯を外したら、クラブヘッドには何が起こる?
まず、フェースの中心付近でボールを打ったケースを想像してください。
インパクトの力は、比較的クラブヘッドの重心に近い位置を通ります。
では、打点がトゥ側やヒール側へズレたら?
インパクトの力は、クラブヘッドの重心に対してズレた位置に作用します。
すると、クラブヘッドを回転させようとするモーメントが発生します。
アイアンでは、この問題がさらに分かりやすくなります。
今度はクラブが、
- ボール
- 地面
の両方と相互作用する可能性があります。
こうした外力は、クラブヘッドを回転させる方向にも作用します。
だからといって、
「グリップを限界まで強く握れ」
と言いたいわけではありません。
「手首を完全に固めろ」
と言いたいわけでもありません。
ポイントはもっとシンプルです。
クラブがねじられる可能性のある衝突へ入っていくのに、なぜ「完全に受動的であること」が自動的に理想になるのでしょうか?
クラブをその衝突の中でコントロールするためには、
- セグメント間の力学的な作用
- 筋出力によるトルク
- グリップによる力
- 構造的な剛性
などが組み合わさっています。
クラブは、何もない空間を自由に回る車輪ではありません。
衝突の中へデリバリーされる道具です。
空手で板を割るイメージを考えると分かりやすい
これは、完全な物理モデルとして使う例ではありません。
あくまで「意図」を理解するためのイメージです。
空手で板を割ろうとしている人が、
「板の表面までは速く動かして、触れた瞬間に受動的になろう」
とは考えませんよね。
イメージとしては、板の先まで打ち抜くです。
ゴルフも、この意味では似ています。
単にボールのところまで速く到達するだけではありません。
クラブを衝突の中へ、そしてその先へデリバリーしていく必要があります。
もちろんこれは、
- インパクト後も永遠にクラブヘッドを加速させる
- 最大限に力む
という意味ではありません。
言いたいのは、
「クラブはもう十分速い。だからここから自分は何もせず、クラブに全部任せればいい」
という説明だけでは、実際のゴルファーがやっていることを完全には表せないということです。
では、「手元を減速させる」のは間違いなのか?
ここで少し意外な答えになります。
いいえ。人によっては、すごく良い「感覚」になります。
ここで分けなければいけないのが、
FEEL(感覚)
と
REAL(実際の動き)
です。
たとえば、インパクトに向かってグリップを極端に前へ運び続けるゴルファーがいるとします。
クラブがほとんどリリースされていません。
このあと紹介するチェックポイントで見ても、シャフト角が僕たちの考えるOKゾーンから大きく外れています。
この人には、僕はこう言うかもしれません。
「手元を止めるくらいの感覚で振ってみてください」
あるいは、
「ヘッドを追いつかせてください」
あるいは、
「手首では何もしないくらいの感覚で、クラブをリリースさせてみてください」
そして、その感覚で急に良い球が出るかもしれません。
では、それで
「ゴルフスイングでは、全員が受動的にリリースするのが正しい」
と証明されたのでしょうか?
違います。
証明されたのは、
そのゴルファーにとって、その感覚が実際の動きをより良い範囲へ移動させた。
ということです。
これはまったく別の話です。
2人のゴルファーが、真逆の感覚を必要とすることもある
これは、僕たちのアメリカ式スイング理論でとても大切にしている考え方です。
ゴルファーAは、
「手首では本当に何もしていない感じです」
と感じるかもしれません。
ゴルファーBは、
「かなり積極的にクラブをリリースしている感じです」
と感じるかもしれません。
でも、その2人の実際のスイングを測ると?
ほとんど同じ動きになっている可能性があります。
なぜでしょうか?
そもそものスタート地点が違うからです。
Aは元々クラブヘッドを早く投げすぎるタイプかもしれません。
Bは元々グリップを前へ引っ張り続けるタイプかもしれません。
この2人に、まったく同じ「正しい感覚」を与える意味はありません。
だから僕たちは、
感覚は、測定値ではない。
と考えています。
さらに言えば、
感覚そのものに「正しい・間違い」があるわけではない。
感覚は、実際の動きを変えるための介入方法です。
見るべきなのは、
その感覚で、実際のスイングがどう変わったのか?
です。
「受動的にリリースすべき?」より先に聞くべきこと
まず、こう考えます。
今、自分はどこにいる?
OKゾーンはどこ?
どちら方向へ動かす必要がある?
そのために、どんな感覚を使える?
本当に変わった?
この順番の方が、ゴルフを上達させるうえではずっと使いやすいです。
そして、これがキウイゴルフでスイング改善を考える基本です。
シンプルな「ビジュアル・フィードバックループ」
やることはシンプルです。
1. スイングを撮影する
感覚だけで判断しない。
2. 確認できるチェックポイントを決める
再現性のあるポジションで動画を止めます。
3. OKゾーンと比較する
範囲内なのか?
一方向へ行きすぎているのか?
逆方向へ行きすぎているのか?
4. 自分のエラーに合わせて感覚を選ぶ
今週YouTubeで流行っている動きだから、ではありません。
5. もう一度打つ
6. もう一度撮る
7. 本当に変わったか確認する
流れは、
今どこにいる?
→ OKはどこ?
→ 何を試す?
→ 実際の動きはOKゾーンへ近づいた?
です。
これが、ゴルフレッスンをただ「知識として見る」のと、実際の改善システムとして使うことの違いです。
金本さんのスイングも、同じ考え方で見ていました
金本知憲さんの例に戻りましょう。
僕たちの仕事は、金本さんに
- 受動的リリース
- 能動的リリース
- 二重振り子
- 手元の減速
のどれを「信じてもらうか」を決めることではありませんでした。
目的は、もっと飛ばすことです。
だから、まず実際のスイングがどうなっているのかを見ます。
確認していたもののひとつが、手元とシャフトの位置関係です。
リリースしすぎているのか?
リリースが足りないのか?
それとも、すでに許容できる範囲に入っているのか?
こういう質問の方が、
「全員ここで手元を止めるべきです」
という一律のアドバイスより、はるかに使いやすいです。
金本さんの飛距離は、最終的におよそ280ヤードから350ヤード付近まで伸びました。
ただし、それは「1つの魔法のリリース感覚」ではなく、複数の測定可能な条件を変えていった結果です。
そして、同じ考え方をあなたのスイングにも使えます。
ここからは、今日すぐ確認できるチェックポイントを1つ紹介します。
フェースオンからできる「リリースチェック」
スイングをフェースオンから撮影してください。
そして、
両手の中心が、ベルトのバックル中央と重なるタイミング
で動画を止めます。
そこで、シャフトに沿って角度を引きます。
キウイゴルフでは、このチェックポイントの目安として、
15〜45°
を1つのOKゾーンとして使っています。
もちろん、
「世界中のすべてのゴルファーが必ずこの1つの角度でなければいけない」
という意味ではありません。
このフェースオンのチェックポイントで、クラブのリリースが大きく外れていないかを見るための許容レンジです。
ここまで来ると、今回の話が一気に実践的になります。
すでに15〜45°に入っている場合
このチェックポイントでは、すでにクラブはかなり適切な範囲でリリースされている可能性があります。
つまり、今後3か月ずっと、
- もっとリリースした方がいい?
- もっとタメた方がいい?
- 手元を止めた方がいい?
- ヘッドを走らせた方がいい?
- 手首をもっと使う?
- 手首を使わない?
- もっと受動的にする?
と悩み続ける必要はないかもしれません。
問題は、まったく別のところにある可能性があります。
YouTubeのレッスンをたくさん見れば見るほど混乱する理由のひとつが、これです。
そもそも壊れていない部分を、ずっと直そうとしている。
0°に近い場合
キウイゴルフのこのチェックでは、リリースが大きすぎる側です。
その場合は、クラブを反対方向へ動かしたい可能性があります。
有効な感覚としては、
- もう少し構造を保つ
- ヘッドを早く投げすぎない
- リリースを少し遅らせる
- 手首の使い方を変える
- 手元をもう少し先まで動かす感覚
などが考えられます。
どの感覚を使うかは、その人次第です。
ここでやっていることに注目してください。
最初から、
「正しい手首の感覚は何ですか?」
とは聞いていません。
僕たちは、
「今ここにいる。だから、もう少しこっちへ動かしたい。」
と考えています。
では、60°前後だったら?
今度は逆です。
OKゾーンに対して、グリップがかなり前へ出ています。
このチェックポイントでは、リリースが足りない側です。
そして面白いことに、このゴルファーには、この記事でここまで注意してきたアドバイスがものすごく効く可能性があります。
僕はこんな感覚を使うかもしれません。
「手元を止めるくらいの感覚で」
「ヘッドを追い越させる」
「クラブを投げる感じ」
「リリースをコントロールしようとしない」
「完全に受動的なくらいの感覚で」
そして、ものすごく良い球が出るかもしれません。
これは矛盾ではありません。
むしろ、今回の記事でいちばん伝えたいことです。
仮にこの人が60°からスタートして、
「手元を止める」という感覚を使い、
30°まで入ってきたとします。
その感覚は成功です。
でも、何が証明されたのでしょうか?
証明されたのは、
「正しいゴルフスイングは、全員が受動的にリリースする」
ではありません。
証明されたのは、
OKゾーンの外にいたゴルファーが、1つの感覚を使って、より良い範囲へ移動できた。
ということです。
この方が、ゴルフレッスンをずっと実用的に考えられます。
あなたの「感覚」は、スイングの物理そのものではない
ゴルフの議論がややこしくなるのは、ここです。
あるゴルファーは、
「手首では本当に何もしていない感じの方が当たります」
と言います。
別のゴルファーは、
「自分はかなり手首を使ってリリースした方が当たります」
と言います。
すると、どちらが「正しいスイング」を理解しているのかという議論が始まります。
でも、2人とも正しい可能性があります。
なぜなら、2人が話しているのは自分の主観的な感覚であって、スイング中に起きている力やトルクを直接測っているわけではないからです。
本人が完全に受動的な感覚でも、セグメント同士は相互作用していますし、筋出力によるトルクも存在できます。
逆に、本人はかなり積極的にクラブをリリースしているつもりでも、実際の動きは想像ほど大きくないかもしれません。
だから、感覚は診断のあとに使う。
先に感覚を決めるのではありません。
結局、「手元を減速させるとヘッドは加速する」のか?
最初の質問に戻りましょう。
手元の速度が落ちている間に、クラブヘッドが加速することはある?
あります。
セグメント同士の相互作用が、そのクラブの加速に貢献することはある?
あります。
「手元を止める」「クラブを自然にリリースする」という感覚が、あるゴルファーにとって有効なことはある?
もちろんあります。
でも、それだけで
能動的な手首トルクがなくなる
とか、
ゴルフスイングは受動的な固定半径の二重振り子である
とか、
全員が意図的に手元を減速させ、手首を受動的にすべき
とまでは言えません。
実際のゴルフスイングは、もっと複雑です。
半径が変わります。
手元の進行方向も変わります。
リダイレクション後に、手元が再加速することもあります。
手首はまだトルクに貢献できます。
クラブは、衝突の中へデリバリーされ、安定させる必要があります。
そして何より、
ゴルファーごとにスタート地点が違います。
感覚は「ツール」。基準は「実際の動き」
この記事から1つだけ覚えてほしいことがあるなら、これです。
感覚そのものに正解・不正解があるのではなく、その感覚で実際のスイングがどう変わったかが重要。
60°のゴルファーには、全部リリースするような感覚が必要かもしれません。
0°のゴルファーには、ほとんどリリースしないような感覚が必要かもしれません。
どちらも正解になりえます。
僕たちの目的は、2人に同じ感覚を持たせることではありません。
2人とも、実際の動きをより良い範囲へ持っていくことです。
これが、キウイゴルフのアメリカ式スイング理論の基本です。
まず、見た目で確認できる基準。
感覚は、そのあと。
今回紹介したのは、たった1つのチェックポイントです
今回紹介した15〜45°のリリースチェックは、ゴルフスイング全体の中のたった1つです。
他にも確認すべきポイントはたくさんあります。
そして、YouTubeだけで上達しようとすると難しくなる大きな理由がここです。
ある動画では、
「もっとリリースしてください」
と言われる。
次の動画では、
「角度をキープしてください」
と言われる。
あるコーチは、
「もっと回転してください」
と言う。
別のコーチは、
「体を止めてください」
と言う。
全部、効く可能性があります。
そのアドバイスが必要なゴルファーなら。
問題は、
自分にはどれが必要なのか?
です。
そのために僕たちが作ったのが、PGAガイドです。
PGAガイドでは、ゴルフスイングをP1〜P10の視覚チェックポイントに分け、
- フェースオン
- DTL(後方)
- アイアン
- ドライバー
それぞれで、実際のスイングと比較できる基準を用意しています。
感覚を決める前に、まず実際の動きを確認する。
「何を感じればいい?」
ではなく、最初に
「自分のスイングは、実際にどうなっている?」
と考える。
そこから感覚を選ぶ。
もう一度撮る。
そして、本当に変わったか確認する。
次にYouTubeで
「もっとリリース」
「手元を止める」
「タメをキープ」
という動画を見つけたとき、そのまま自分のスイングへ入れる前に、まず確認してください。
今の自分は、本当にそれを直す必要があるのか?
最速で上達する方法は、「全員に当てはまる完璧な感覚」を探すことではありません。
自分のスイングで、Root Flaw(ルートフラウ)を見つけることです。