ゴルフレッスンを見ていると、こんな言葉を一度は聞いたことがあると思います。
「切り返しは下半身から」
ほかにも、
- 「腰を先に回す」
- 「下半身リードで振る」
- 「上半身を残す」
- 「左足を踏み込む」
- 「手から下ろさない」
といった説明があります。
正直、こういうアドバイスが広まった理由はよく分かります。
切り返しは、中級者がかなり迷いやすい場所だからです。
レッスンでも、よくこんなことを言われます。
「切り返しで打ち急いでしまいます」
「トップから何を動かせばいいか分かりません」
「全部が一気に動いてしまう感じがします」
「切り返しで毎回迷子になります」
だから、
「下半身から始めてください」
と言われると、シンプルで分かりやすく聞こえます。
でも、ここにはかなり大きな問題があります。
そもそも「下半身」って、どこですか?
「下半身」と一言で言っても、実際にはかなり多くの部位があります。
骨盤。
左ヒップ。
右ヒップ。
左ひざ。
右ひざ。
両足。
足裏にかかる圧。
そして、それぞれの部位は同じ方向にしか動かないわけではありません。
回転する。
横へ動く。
曲がる。
伸びる。
それぞれ違う方向へ動く。
動く量も違う。
なので、
「切り返しは下半身から」
という言葉を聞いたとき、僕が最初に思うのは、
どこのこと?
どの方向?
どれくらい?
何に対して?
です。
ここが分からないままだと、かなり曖昧なアドバイスです。
でも、実はもっと大きな問題があります。
そもそも「何から切り返すか」を考える前に、見るべきことがある
多くのゴルファーは、切り返しで迷うとすぐに、
「何から動かせばいいですか?」
と考えます。
でも、僕ならそこからは始めません。
最初に見るのは、
今の自分の切り返しが、実際にどうなっているのか?
です。
そしてもう1つ。
そもそも切り返しは、本当に今のスイングで優先して直すべき問題なのか?
ここを先に見ます。
なぜなら、
スイングが崩れて見える場所と、問題が始まった場所は同じとは限らないからです。
「切り返しが悪い気がします」と言われたら、もちろん切り返しを見ます。
でも、そこで何かズレを見つけたら、さらに前へ戻ります。
トップ。
ハーフウェイバック。
テークバック。
場合によってはアドレスまで戻ります。
切り返しで見えているミスが、もっと前の動きを補正するために起きていることもあるからです。
切り返しで、実際に何を見ているのか
最低限、僕は数か所の視覚チェックポイントを見ます。
後方から見るなら、トップ付近では、
- クラブヘッドの高さ
- シャフトの位置
- グリップエンドが地面に対してどこを向いているか
などを確認します。
そこから手元が少し下がり始めたところでは、
トップからシャフトの向きがどれくらい変わったか
を見ます。
つまり、
切り返しでどれくらい大きなリダイレクトやねじれが起きているのか?
です。
そしてハーフウェイダウン付近では、
- 手元の位置
- シャフト角
を確認します。
ただし、大事なのは1枚ずつの静止画を見ることではありません。
本当に見たいのは、
トップの位置から考えたとき、ハーフウェイダウンの位置が自然につながっているか?
です。
それとも、
途中で大きな補正動作が入っているか?
ここを見ます。
その「切り返しのミス」、実は補正動作かもしれません
たとえば、ハーフウェイバックで手元がかなりボール側へ外れていたとします。
そこからトップまで行っても、まだかなり外側にいる。
もし、そのままの関係でダウンスイングへ入ればどうなるでしょうか?
手元はかなりボールに近く感じます。
そのままでは打ちにくい。
なので、体は無意識に問題を解決しようとします。
切り返しで手元を大きく体の後ろ側へ入れる。
いわゆる大きなループが起こります。
すると、外から見れば、
「切り返しで手元が後ろに入りすぎています」
ということになります。
もちろん、それ自体は事実かもしれません。
でも、
そのループが最初の問題とは限りません。
たとえば、
ハーフウェイバックで手元が外。
トップでもまだ外。
そこからハーフウェイダウンで一気に後ろ。
という流れなら、
切り返しのループは、もっと前の手元位置を補正するために起きている可能性があります。
そして本人は、
「プッシュアウトが出ます」
「急にチーピンが出ます」
「ダフリが増えます」
と言うかもしれません。
ここまで全部つながれば、
単純に「切り返しで手元をこうしてください」と直すより、
もっと前の手元位置を少し整える
方がシンプルな場合があります。
その位置を何度か繰り返していけば、体が大きなループを作る必要も減っていくかもしれません。
これなら、
テークバック。
トップ。
切り返し。
全部に別々の意識を持たせなくて済みます。
では、良い切り返しでは何が起きているのか?
ここで、PGAガイドでも使っている考え方が重要になります。
それが、
リセンタリング
です。
多くのアマチュアは、スイングをこう考えています。
バックスイングが終わる。
↓
切り返す。
↓
ダウンスイングが始まる。
でも、実際の良いスイングでは、そんなにキレイに3つへ分かれていません。
切り返しは、もっと早く始まっています。
切り返しは、バックスイングが終わる前にもう始まっています
右打ちのゴルファーを想像してください。
バックスイングで手元がだいたい胸の高さくらいまで来る。
ここまでは、体はトレイルサイド、つまり右側へ移動しています。
でも、このあたりから、
それ以上ずっと右側へ動き続けるわけではありません。
手元はまだ上がっています。
腕もまだトップへ向かっています。
胸もまだバックスイング方向へ回転しています。
でも同時に、
体はすでにリードサイド、つまり左側へ戻り始めます。
これがリセンタリングです。
つまり、
バックスイングを終えながら、すでに左へ戻り始める。
この「重なり」がポイントです。
トップに着いてから切り返すわけではない
ここはかなり大事です。
多くのゴルファーは、
「まずトップを作る」
「そこから切り返す」
と考えています。
でも、実際には、
トップに到達する前から、切り返しは始まっています。
手元がまだトップへ向かっている途中で、
体はすでにリードサイドへ戻り始めている。
トップでは、いきなり体重の100%が左足に乗っているわけではありません。
目安としては、60〜70%くらいまで左側へ戻っているイメージです。
大事なのは数字そのものではなく、
手元がトップに到達するまで、ずっと右へ乗り続けない
ということです。
右側への移動が止まり、
バックスイングを完成させながら、
左側への移動が始まる。
これが、かなり重要です。
多くのアマチュアは、その前にもう逆回転を始めてしまう
よくあるのは、こういうパターンです。
手元が胸の高さくらいまで来る。
そこからリセンタリングするのではなく、
骨盤と胸郭をいきなりバックスイングと逆方向へ強く回し始める。
本人としては、
「よし、ここからダウンスイング」
という感覚かもしれません。
でも、このとき、
- 手元が外側へ出る
- シャフトが立つ
- 切り返しが急になる
といったことが起きやすくなります。
そして本人は、
「切り返しで打ち急いでしまう」
と感じます。
「打ち急ぎ」は、単純にスイングが速いという意味ではない
ここも大事です。
僕は、
「切り返しが速いから悪い」
とは思っていません。
速く動いてもいい。
切り返しで回転が強くなってもいい。
グリッププレッシャーが増えてもいい。
問題は、
リセンタリングを飛ばして、そのまま逆方向の回転へ入ってしまうこと
です。
つまり、
右へ動く
↓
バックスイングが終わる前に左へ戻り始める
↓
そこからしっかり回転する
ではなく、
右へ動く
↓
いきなり反対方向へ強く回る
になっている。
この違いです。
なので、
「打ち急ぐから、もっとゆっくり振りましょう」
だけでは、問題を解決できない場合があります。
本当に見るべきなのは、
どの動きが、どのタイミングで起きているか?
です。
では、本当に「下半身」が先に動いているのか?
ここで、
「やっぱり下半身リードなんじゃないですか?」
と思うかもしれません。
実際、リセンタリングでは骨盤が横方向の動きを少し先行しているように見える選手もいます。
でも、僕はそこをあまり重要視していません。
なぜなら、
胸郭と骨盤の動きの差は、かなり小さいからです。
実際にスイングを見ると、
リセンタリングでは骨盤も胸郭も一緒に左方向へ動いています。
もちろん、骨盤がほんの少し先行しているように見えるケースはあります。
でも、その微妙な差をアマチュアが意識的にコントロールする必要があるでしょうか?
僕は、ほとんどの場合ないと思っています。
もっと大事なのは、
右側へ動き続けていないか
トップに到達する前に左へ戻り始めているか
その前に骨盤と胸郭を一気に逆回転させていないか
です。
その方が、ずっと確認しやすい。
そして、実際の練習にも使いやすいです。
なぜ「下半身リード」がこんなに教えられるのか?
理由は分かります。
コーチは、
- トップから手元が外へ出る
- シャフトが立つ
- 上半身から突っ込む
- 切り返しで全部が一気に回る
というアマチュアをたくさん見ます。
だから、
「上半身を残してください」
「腰から動いてください」
「下半身リードです」
と伝える。
意図としては理解できます。
でも、実際に起こしたいことは、
単純に、
「腰を先に回す」
ではない場合があります。
本当に必要なのは、
バックスイングが終わる前に、リードサイドへ戻り始める重なり
かもしれません。
ここを分けて考えることが大切です。
じゃあ、「下半身から」は間違いなのか?
いいえ。
ここはかなり大事です。
僕はレッスンで、
下半身が先に動くような感覚
を使うことがあります。
ただし、
全員に使うわけではありません。
たとえば、正面(フェースオン)から見たとき、
トップで胸骨が骨盤よりかなり前に出ている。
いわゆるリバースピボットに近い状態です。
そして、その関係が切り返しでもそのまま残っている。
こういうゴルファーなら、
「上半身を少し後ろに残す」
「左ヒップを横へ動かす」
という感覚を使うことがあります。
上半身と下半身の分離を、あえて大きく感じてもらう。
なぜなら、その人は反対側へズレているからです。
その感覚を使った結果、
実際のスイングが普通のOKゾーンに戻るなら、それでいい。
逆に、「下半身リード」をやらない方がいいゴルファーもいる
今度は逆です。
トップで胸骨が骨盤よりかなり後ろ。
すでに上半身と下半身の分離がかなり大きい。
そこからさらにヒップを左へスライドさせる。
こういう人に、
「もっと下半身から」
「もっと上半身を残して」
と言ったらどうなるでしょうか?
さらにズレる可能性があります。
この場合、僕ならむしろ、
「少しリバースピボットするくらいの感覚」
「上半身が少し先に動く感覚」
を使うこともあります。
もちろん、
本当にリバースピボットさせたいわけではありません。
あくまで感覚です。
そしてスイングを撮影する。
その感覚を使った結果、
実際のスイングがOKゾーンへ入ったかを見る。
それだけです。
2人のゴルファーに、真逆のことを言うこともある
ゴルファーAには、
「上半身を残して、左ヒップを先に動かしてください」
と言う。
ゴルファーBには、
「上半身が少し先に動くくらいの感覚で大丈夫です」
と言う。
完全に逆です。
でも、目指している実際のスイングは同じかもしれません。
ここが大事です。
感覚は、正解そのものではありません。
感覚は、
実際のスイングを変えるための入力
です。
そして確認するべきなのは、
その感覚を使った結果、実際のスイングがOKゾーンへ入ったか?
です。
だからこそ、まず「良い切り返し」が見えないといけない
中級者が切り返しで迷う一番大きな理由の1つは、
アドバイスが足りないからではありません。
むしろ、たくさん聞きすぎているくらいです。
- 下半身から
- 腰を先に
- 上半身を残す
- 左足を踏む
- 手は使わない
- シャローにする
- 力を抜く
- トップで間を作る
でも、本当に必要なのは、
良い状態と悪い状態が、映像でどう違うのかを知ること
です。
そのために、僕たちはPGAガイドを作りました。
P1〜P10まで、
- アイアン
- ドライバー
- 正面(フェースオン)
- 後方
それぞれで確認できる視覚チェックポイントとOKゾーンをまとめています。
この切り返しの話なら、特に見てほしいのは、
胸骨と骨盤の位置関係
です。
バックスイング中の胸骨と骨盤の位置関係
切り返しからインパクト付近の胸骨と骨盤の位置関係
スマホで自分のスイングを撮って、
無料のスイング解析アプリで止めるだけでも確認できます。
重要なのは、
「正しく感じたか?」
ではなく、
「実際にどう動いたか?」
です。
すべてのチェックポイントとOKゾーンを確認したい方は、PGAガイドで見ることができます。
では、トップで一度止まるのはどうなのか?
これは良いとも悪いとも言えません。
新しいポジションを覚えるとき、僕たちは一度止まってから振る練習を使うことがあります。
やり方はシンプルです。
新しく覚えたいポジションで一度止まる。
3秒カウントする。
そこから続けて振る。
必要なら、1回のスイングの中に1〜2か所、止まる地点を作ります。
なぜやるのか?
フルスピードでいきなり新しい動きを作るより、
最初は少し時間を作った方が、脳が新しい動きを整理しやすいからです。
なので、松山英樹選手のようにトップ付近で「間」が見える選手を見ても、
「トップで止まる方が絶対に正しい」
とは言えません。
その選手が長年使ってきた練習方法や感覚が、スイングに残っている可能性もあります。
つまり、
練習方法として有効なものと、全員に必要なスイング動作は別です。
「手は使わない」の話は、ここでは深入りしません
切り返しでは、
「手を使わない」
「腕を自然に落とす」
という話もよく出てきます。
ただ、ここはかなり大きな議論になります。
クラブや腕の動きには、
他の体の部位との相互作用によって生まれるトルクもあります。
一方で、
ゴルファー自身が筋肉を使って作るアクティブなトルクもあります。
他の部位によって手元が動いたからといって、
筋肉によるトルクがゼロだった
とは言えません。
逆に、プロ本人が、
「手は何もしていない感覚です」
と言っても、
それだけで実際の筋活動がゼロだったことは証明できません。
この分野は研究でも解釈が分かれる部分があります。
なので、今回の記事ではここまでにします。
ほとんどのゴルファーにとって大事なのは、
手を使った感覚だったか?
ではなく、
その感覚で実際のスイングがOKゾーンに入ったか?
です。
詳しくは、手元の減速とパッシブリリースについて検証した記事で解説しています。
では、切り返しで本当に見るべきことは何か?
まず、
「何から動かすべき?」
から始めないことです。
最初に見るのは、
今の自分の切り返しがどうなっているか?
です。
次に、
本当に切り返しがRoot Flaw(ルートフラウ)なのか?
を見る。
もしハーフウェイダウンでズレているなら、
トップ。
ハーフウェイバック。
テークバック。
必要ならアドレスまで戻る。
そして、本当に切り返しが問題なら、
1つ覚えてほしいことがあります。
切り返しは、トップのあとに始まるわけではありません。
手元がまだバックスイングを終えている途中で、
体はすでにリードサイドへ戻り始めています。
この重なりが、リセンタリングです。
最後に
「切り返しは下半身から」
この言葉自体が、完全に間違っているわけではありません。
ただ、
そのままではかなり情報が足りません。
下半身にはたくさんの部位があります。
それぞれ違う方向へ動きます。
動く量も違います。
そして、今の自分のスイングによって、
「下半身から」
という感覚が良くなる人もいれば、
逆に悪くなる人もいます。
だから、まず考えてほしいのはこの3つです。
1. 今の自分の切り返しは、実際にどうなっているか?
感覚ではなく、動画で見ます。
2. その問題は、本当に切り返しから始まっているか?
ハーフウェイダウンでズレているなら、もっと前へ戻って確認します。
3. どんな感覚を使えば、実際のスイングがOKゾーンに入るか?
ある人には、
「下半身から」
が必要かもしれません。
別の人には、
「上半身が先」
くらいの感覚が必要かもしれません。
感覚は人によって違っていいんです。
大事なのは、
実際のスイングが必要な範囲に入ったかどうか。
そして技術的に1つだけ覚えて帰るなら、
これです。
切り返しは、バックスイングが終わる前にもう始まっています。
手元はまだトップへ向かっている。
でも、体はすでにリードサイドへ戻り始めている。
この重なりを理解すると、
切り返しは、
「何から動かす?」
という話より、
「自分のスイングは、どこからどこへ動いている?」
という、もっと確認しやすい問題になります。
そしてその方が、
ずっと上達しやすいと思います。